【インド】ヒマラヤ自転車旅 DAY6(ワリ・ラ)

長期ツアー
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穏やかな朝

テントから出ると、昨晩爆風が吹いていたのが嘘のような穏やかな世界が広がっていた。キンキンに冷えた小川の水で顔を洗ったのち、温かいごはんをかき込む。実に清々しい朝だ。


“わかめご飯とサバ缶”


テントの撤収前、改めて丘の上から野営地を見下ろしてみると「すごい場所で寝ちゃったなぁ。」としみじみ実感する。ちなみにここは標高4,500mということもあり昨晩は特に風が強かったが、テントは全くノーダメージだった。さすがはモンベルが誇る山岳用テント。

ワリ・ラ攻略

手際よくテントを片付けて、2人は再びワリ・ラの頂を目指してペダルを回し始めた。頂上までは残り12km、800m上昇。ゆっくり登っても十分日没までにはレーに辿り着けるので、とても心は穏やかだ。
唯一の心配は、水が残り1Lしかないことくらいだろうか…。


美しいカルスト地形に見惚れていると、何やら高速で移動している生き物が視界に入る。


「何がいるんだ?」と目を凝らしてみると…

なんと!そこにはマーモットが!!


よくよく周囲を見回してみると


いたるところにマーモットさんがいらっしゃった(笑)


かなりすばしっこいので写真に収めるのは結構運ゲーだったが、この後も50匹以上は見ただろうか。おそらくここワリ・ラは交通量が全然ないので、その分警戒心の強いマーモットでも多く住み着くことができているのだろう。当初通る予定だったチャン・ラ方面は交通量が多く、ここまでたくさんのマーモットに出会えなかったと思われるので、少々得した気分だ。

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標高5,100mを越えたところで、アスファルト舗装からレンガ道にチェンジ。異国情緒があって、実に絵になる景色だ。


視線を下に向けるとパノラマビューが広がっており、今まで登ってきた道を一望できる。呼吸がかなり苦しかったカルドゥン・ラの日と比べて、今日はかなり余裕がある。自身の成長も感じながら、頂上に向けてラストスパートをかけた。そして…

ワリ・ラ(標高5,266m)、制覇!!


“世界で13番目に高い峠”という何とも微妙な位置づけの峠だが、これだけ緑豊かな草原・野生動物を見られる道はラダックだと他には無いのではないだろうか。ひょんなことから登る羽目になった峠ではあるが、また登りたくなるような不思議な魅力をもった峠だった。

大荒れのダウンヒル

ワリ・ラの頂上は、その昔峠の茶屋があったであろう廃墟があるだけで他は何もなく。水が底を尽きかけていた2人は、サクティを目指して先を急ぐことにした。ここからは30kmに渡る超ロング・ダウンヒルだ。


遥か下界にサクティの町が見えたとき、不穏な色をした雲が立ち込め始めた。


刹那、大粒の雹が降り始める。ダウンヒルで速度が出ているのも相まって、カラダに当たるとめちゃくちゃ痛い。笑


あまりにも痛すぎるので停滞したい気もしたが、銀次郎が元気良く遥か先を下っているのが見えたので、私も嫌々走り出した(早く止んでくれ~)

“永遠に続くように思えた九十九折”


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道中マーモットと衝突するトラブルがありながらも、無事サクティに到着。先ほどまでの荒れ模様が嘘だったかのように下界は晴れており、やはり山の天気は怖いなとしみじみ実感した。


とは言え雹のお陰で(?)想像よりも早く着くことができたので、ここサクティでは軽く水分補給だけしてガッツリした昼食はカルーで食べることに。結果的に、カルーの方がかなり栄えていたのでこの判断は正解だったと思う。

サクティから先は、日本の1桁国道並みの綺麗な道に変わったこともあり、カルーにはあっという間に到着。そして、トゥクパとカワ茶で優勝するのであった。


ここで偶然、ディスキットのゲストハウスで2夜を共にしたイタリア人旅行者一団とまさかの再会を果たす。私たちが走ってきた道のことを言うと「きっとギネスに載れるぜ!」と讃えてくれて、とても気持ちが良かった。
また、KIKのことも覚えてくれていたようで「君たちは3人いたと思うけど、あと一人はどうしたんだい?」と心配してくれた。

昨日からずっと電波が無かった影響で連絡が取れていなかったが、KIKは元気にやっているだろうか。そんな気持ちを胸に、レーに向けて走り出した。

ウィニングラン

カルーからレーは、全体を通して緩やかな下り基調でぐんぐんスピードが出る。またアメリカ西部のような荒涼とした、ダイナミックな風景が広がり続けていてとても気持ちが良い。


幹線道路ということもあり交通量は多いが、昨日からずっと人里離れた土地を走っていたこともあってか恐怖心よりも安心感の方が勝った。

この過酷なツアーも、残り30kmで終わってしまうと思うと名残惜しい。空の広さを全身で感じながら、ペダルを回し続けた。


“スタクナ・ゴンパ”


徐々に町の活気が増してきて、本当に一周回って戻ってきたんだなと実感し始める。そして下り基調の道が終わりを告げ、そして最後の登り坂を登っていると…

巨大な“WELCOME TO LEH”の文字が!!
感動のあまりつい喜びの奇声を上げてしまった。笑


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ホテルの近くに差し掛かったところで、見覚えのあるシルエットの人物が視界に入る。KIKである。昨日、今日とレー近郊をのんびり散策していて、先ほどまではカフェでゆっくりしていたらしい。とりあえず元気そうで良かった。

3人全員揃ったところで、1週間ぶりにホテルドラゴンレーにチェックイン。


100ルピーのチップの効力もあったのか、自転車の箱も綺麗に保管していただけていたのでひと安心。


自転車を箱詰めしたのち、3人は夜のレーの町に繰り出した。その後は、バザールで値切りバトルをしたりなどしてとても楽しかった。

旅立ちの日に

楽しかった日々がおわり、いよいよ今日でラダックともお別れ。ということで、道中首すじの日焼けから守ってくれた布をソマ・ゴンパにて奉納した。今までありがとう。


ルピーは国外に原則持ち出し禁止ということで、両替商にてドルに換金。手数料がほぼ掛かっていないんじゃないか?というレベルの好レートで換えてもらえることができて良かった。

お土産も一通り買い揃えた後、前日のうちにホテルに依頼していたタクシーを待つ。2時間半前にあたる11時に出発する予定だったが、タクシーは15分遅れて到着。こういった遅れをも見据えたうえで依頼していたので無問題、ということで無事空港にゲートイン。


空港内には、Inigoのオンラインチェックイン画面・パスポートを見せたらすんなりと入ることができた。また、IndiGoはよく欠航するようで大量の飛行機がキャンセル表示となっていていたが、我々が搭乗予定の飛行機は奇跡的にちゃんと飛ぶようで胸を撫で下ろした。(30分後の飛行機が欠航になっていたので本当に危なかった…。)

ということで一行はデリーに向けて飛び立った。


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デリー空港では乗り換え時間が、私とKIKは8時間ある一方で、銀次郎はたったの3時間。(レーにはお酒が飲める場所があまり無かったので)空港内で軽く打ち上げしたいと考えて、3人ともとりあえず国際線ターミナルに入場することにした。受託手荷物を預けて身軽になった状態で、一杯やろうという算段である。

私が乗る予定の飛行機は8時間後ということで、「第3ターミナルにそもそも入場できないのでは?」と懸念されたが、何も咎められること無く無事室内に入場。


「これで打ち上げができるな…!」と安堵したのも束の間、マレーシア航空のカウンターが18時まで開かず、また手荷物検査ゲートをくぐらない限りちゃんとしたレストランが無いことが判明。

これじゃあ入った意味がないじゃないかということで、一旦外に出ようとしたがそれも許されるはずもなく。結局この何も無い空間で約4時間待つことになったのであった(絶望)


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出航4時間前の19時、ようやくマレーシア航空のチェックインカウンターが開かれた。一目散に駆けつけて、受託手荷物預け入れ・X線・出国手続き・手荷物検査とトントン拍子でこなして、セキュリティエリアに入場。

そして、待ちに待った打ち上げを開宴…!1週間ぶりのビール、しかも北インド産の名酒・ゴッドファーザーということで、言うまでもなくめちゃくちゃ美味しかった。


今回のツアーは“今までの常識が通用しない旅”ということで、取り敢えず“五体満足で帰ってきてデリーで乾杯すること”を約束してから出発したのだが、こうして約束通り開宴できて実に感慨深い。

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帰りの飛行機の中では、あと1週間くらいはインドを走りたいような名残惜しさがあり、例えるならジブリを見た後の心がすっぽり空いたような感覚に襲われたが、こういう感情が湧き上がるということはきっと今回は良い旅ができたということであろう。

こうして、9日間に及んだインド自転車旅は幕を下ろした。

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